前回、“周年史の宝庫” 神奈川県立川崎図書館の活用術①では、所蔵周年史から「編纂方針のヒント」を見つけ出すことがポイントだとご紹介しましたが、今回は「便利な使い方」について。これまで訪れた方にも、遠方のため川崎図書館を訪れるのが難しい方にも便利な使い方を司書の高田さんにお聞きしました。(全2回で今回が最終回です)
便利な使い方① オンラインコンテンツ
他の図書館と同様に、川崎図書館のホームページから蔵書検索も可能ですが、独自のコンテンツもあります。その中から、社史を知るのに役に立つ「すごい社史」「バーチャル社史室」をご紹介します。どちらも来館前にチェックしてみることをおすすめします。
◎すごい社史
文字通り川崎図書館の司書が「すごい!」と感じた本を、画像と説明で紹介しています。とくに装丁に趣向を凝らした周年史が多く掲載されており、印象に残る装丁をつくりたい方にとって、アイデアの種になるはずです。サイトで参考になりそうな社史を見つけてから、図書館を訪れることで効率も良くなります。
「『すごい社史』に掲載した本をご覧いただいた方に「すごい!」とおっしゃっていただくと、「よし、やった」と手応えを感じます」とユーモアたっぷりな高田さんが印象的でした。
◎バーチャル社史室
社史コーナーの開架棚(一部、書庫も含む)に並んでいる本の背表紙を閲覧できます。土木、建築、食品といった業界ごとに分類されているため、「食品業界でどんな企業が社史をつくっているか」「建築では…」といった調べ方もできます。随時更新ではないため、新しい蔵書が入っていない場合もありますが、社史コーナーがどういうところか、雰囲気が感じられるコンテンツです。
便利な使い方② 遠隔地から取り寄せる
川崎図書館への訪問が難しい地域の場合、近くの図書館まで社史を取り寄せすることもできます。こちらは、多くの公共図書館が行っているサービスで、利用者は近くの図書館に申込をすれば、その図書館にない資料を他の図書館から取寄せてもらい利用できます。送料が必要になるケースもあるなど、図書館によって対応や手続きは異なります。まずはお近くの公共図書館にてご相談ください。
貸出できないものもありますが、川崎図書館のホームページで探した周年史を、近くの図書館まで取り寄せするといった使い方もできます。
取材中に見つけた“特色ある周年史”
ここまで活用術を解説してきましたが、実際、どのような周年史があるのか。川崎図書館所蔵の周年史から、周年倶楽部編集部が見つけた特色ある本をいくつかご紹介します。
『羽田空港ターミナル60年史』(2016年)
前社史『50年の歩み』を収録したDVDと、通史の2冊セットで刊行され、DVDケースに飛び出す絵本のような仕掛けが施されています。
『新たなSEEDを求めて』(2015年)
消しゴムメーカー「シード」の100年史です。青い部分が外函、白い部分が本誌になっており、消しゴムメーカーのこだわりが光る装丁です。
『サカヱのあゆみ』(2017年)
公園のベンチや設備などを手掛ける企業の100周年記念誌です。表紙裏には公園の草木をイメージするような緑の起毛素材が使われています。
『敷島製パン100周年記念誌』(2020年)
社員向けに制作された記念誌であり、「普段本を読まない人でも抵抗感なくページが開けるように」との想いから、全編にわたってオリジナルイラストが採用されています。社員ばかりでなく家族も一緒に紙面に登場するなど、温かみあるつくりが特長です。
取材を終えて
私たちも勉強を兼ねて訪れることが多い川崎図書館。中には、遠方から何度も通う編纂担当の方もいるのだとか。その理由には。単純に所蔵数が多いだけでなく、高田さんをはじめ司書の存在が大きいと思います。時には、制作についての相談を受けることもあるそうです。
「社内にノウハウがない、本をつくった経験が無い…いきなり社史を編纂するのは難しいことです。ここで社史づくりのヒントを見つけてもらえるとうれしいですね」と話す高田さんから、周年史に携わる情熱を受け取った気がしました。
<2020年8月現在は通常通り開館していますが、ご来館の前に図書館ホームページで開館状況をご確認ください>
神奈川県立川崎図書館ホームページ