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社是・社訓⑱~武田薬品工業

~タケダイズム~

武田薬品工業は1781年創業の国内トップの医薬品メーカーだ。初代近江屋長兵衛が大阪・道修町で和漢薬の商売を始めた。創業当時から聖徳太子の十七条憲法の基調をなす「和を以って貴(とうとし)と為す」の考えから、「事業は人なり、しかも人の和なり」を商売の基本に掲げていた。この考えを社是と言える「規(のり)」として明文化したのは1940年、5代目の武田長兵衛社長によってだ。

1.公に向ひ国に報ずるを第一義とすること
2.相和(やわら)ぎ力を協(あは)せ互いに忤(さから)はざること
3.深く研鑽(けんさん)に黽(つと)めその業(わざ)に倦まざること
4.質実を尚(たっと)び虚飾を慎むこと
5.礼節を守り謙譲を持すること
 
創業時からの「和」を大事に、質実、礼節を守り、研究開発やビジネスの革新を旨とする「規」を現代に生かそうと、2002年に当時の武田國男社長は行動原則として示したのが以下の5項目だ。
「生命の尊厳に対する畏敬の念と高い倫理観」
「事業の本質、自らの存在価値のたゆまぬ追求」
「自己責任の完遂に立脚した強固な連携」
「フェアで誠実に接する心と相互の信頼」
「絶えざる自己革新と、スピード・効率の追求」

その後、経営理念を「優れた医薬品の創出を通じて人々の健康と医療の未来に貢献する」とし、社是として「タケダイズム」が制定された。武田の強みである「誠実」(Integrity)を基軸として、公正(Fairness)、正直(Honesty)、不屈
(Perseverance)を全ての行動の指針とした。さらに「常に患者さんを中心に考えます」「社会との信頼関係を築きます」「レピュテーションを向上させます」「事業を発展させます」の4つの重要事項について、その優先順位に従って考え、行動することを明記した。タケダイズムとPatient(患者中心)、Trust(社会との信頼関係構築)、Reputation(レピュテーションの向上)、Business(事業の発展)を組み合わせて行動していくと、英語でも優しく分かるようにしたのは、世界のグループメンバー全員に浸透させる目的からだ。

製薬業界は世界的な競争が激しくなっている。武田薬品工業は日本でトップでも世界の中では、トップ10にも入っていない。この10年で約2兆円の海外企業のM&Aを行なっており、2014年から初の外国人としてクリストフ・ウェーバー氏が社長に就任し、ボードメンバーにも外国人が多い。グローバル化の中で創業以来のDNAを生かしながら、世界の中で戦うには高い倫理観と自己革新が社員に求められる。社是と企業理念は創業235年の知恵と経験が生かされている。

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斎藤 治​
Writer 斎藤 治​

1954年青森県弘前市生まれ。'79年慶応大学商学部を卒業し、読売新聞大阪本社入社。広島支局(現広島総局)、姫路支局勤務を経て,'82年大阪本社社会部、'85年政経部(現経済部)、'88年東京本社経済部(重工業クラブ、建設省、通産省担当)、'91年大阪本社政経部(金融、機械、財界などを担当)、'98年経済部次長、2001年調査研究室(現論説・調査研究室)研究員、2007年同主任研究員、2012年6月記事審査部委員、2014年9月退職。現在、フリージャーナリスト。白鷹堂代表。

大阪大学大学院(国際公共政策研究科)、関西学院大商学部、武庫川女子大などで非常勤講師。読売新聞大阪本社で長期連載した「技あり関西」取材班として2006年坂田記念ジャーナリズム賞を受賞。関西日本香港協会理事、同華人研究部長。2003年から始まった華人経営塾「チャイニーズ・マネージメント&マーケティング・スクール」のモデレーターを務めている。共著に「日中韓の戦後メディア史」(藤原書店)、「時代の車窓から見た中小企業」(晃洋書房)、「時代の証言者売新聞社)など。

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