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思いを伝える社是・社訓⑰~オムロン

「社憲」-われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会を作りましょう

オムロン(京都市)は制御機器、電子部品、健康医療機器の大手企業だ。
世界110カ国・地域に3万8,000人の従業員を擁する。社是に当たるのは、創業者の立石一真が1959年に定めた社憲「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会を作りましょう」だ。

創業者は熊本の出身で、兵庫県庁に電機技師として就職後、民間企業の技術者などを経て、1933年に大阪で立石電機製作所を創業した。1944年に工場を京都に移した。本社のあった京都・御室(おむろ)にちなんで後に社名を「オムロン」に変更することになった。

社憲を作った背景には、「企業は利潤の追求だけでなく、社会に貢献してこそ存在する意義がある」といった創業者の強い思いがある。「社会に奉仕する義務がある。それが経営者の社会的責任で企業の公器性である」と語っている。社会から出てくるニーズに対して「できるだけ満足できる技術、製品、システムを開発して社会課題を解決する」と強調している。社憲は5月10日の創業記念に内外へ示された。「われわれの生活とは、小乗的には全社員の生活であり、大乗的には全人類です」と全社員が唱和し、名刺にも印刷した。

創業者の考えが企業文化にも色濃く反映されている。「ものごとを“できません”というな。どうすればできるかを工夫してみることだ」と述べている。考えに考え抜いて、失敗してもチャレンジし続ける。ベンチャー精神を奨励するこの文化は現在も社内で生き続けている。創業者は1991年1月に90歳で亡くなったが、その精神は社憲と共に、企業理念の中で生かされている。

2015年に改定された企業理念では、「私たちが大切にする価値観」として、
・ソーシャルニーズの創造
私たちは、世に先駆けて新たな価値を創造し続けます。
・絶えざるチャレンジ
私たちは、失敗を恐れず情熱を持って挑戦し続けます。
・人間性の尊重
私たちは、誠実であることを誇りとし、人間の可能性を信じ続けます。

企業理念の実践を促進していくために、「TOGA(The Omron Global
Awards)」を2012年度からスタートした。企業理念に基づくテーマを宣言して、チームで協力しながら取り組む活動だ。有言実行で、失敗してもその中から学んだことを評価するというユニークなものだ。2015年度には4,173チームがエントリーし、38,100人が参加した。エリアごとの選考で13に絞り込まれ、創業記念日に京都本社で発表会があり、日本国内ではライブ放送し、社内情報サイトを通じて海外にも発信した。企業理念の実践強化を行うため、立石文雄会長が、海外の幹部社員との対話も行なっている。こうした活動を通じて、創業者の生きた言葉が健在だ。

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斎藤 治​
Writer 斎藤 治​

1954年青森県弘前市生まれ。'79年慶応大学商学部を卒業し、読売新聞大阪本社入社。広島支局(現広島総局)、姫路支局勤務を経て,'82年大阪本社社会部、'85年政経部(現経済部)、'88年東京本社経済部(重工業クラブ、建設省、通産省担当)、'91年大阪本社政経部(金融、機械、財界などを担当)、'98年経済部次長、2001年調査研究室(現論説・調査研究室)研究員、2007年同主任研究員、2012年6月記事審査部委員、2014年9月退職。現在、フリージャーナリスト。白鷹堂代表。

大阪大学大学院(国際公共政策研究科)、関西学院大商学部、武庫川女子大などで非常勤講師。読売新聞大阪本社で長期連載した「技あり関西」取材班として2006年坂田記念ジャーナリズム賞を受賞。関西日本香港協会理事、同華人研究部長。2003年から始まった華人経営塾「チャイニーズ・マネージメント&マーケティング・スクール」のモデレーターを務めている。共著に「日中韓の戦後メディア史」(藤原書店)、「時代の車窓から見た中小企業」(晃洋書房)、「時代の証言者売新聞社)など。

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