「仮目次」の切り口、組み立てがその後の年史づくりを左右する
仮目次は年史の背骨
年史の制作実務で、最重要かつ難関といえるのが目次づくりです。目次とは、一般には書物の巻頭近くにあり、各章・節などの内容がどのページから始まるかを示し、巻末にある50音順のインデックス(索引)と対を成します。しかしここでいう目次づくりとは、沿革の内容がどのような構造かを示す作業を指します。部・編・章・節あたりまでを想定して、時代ごとの区分や文字量のバランスがとれているか配慮しつつ、内容を見通すための骨格となるものです。その仮段階の目次を、仮目次と読んでいます。
はっきり申し上げて、目次がつくれるかどうかで、編集者や執筆者の実力が分かれます。とりわけ年史執筆者の必要十分条件が、目次づくりだと申して過言ではありません。いわゆる章立てと、章に収める記述項目を単純に羅列することは誰にでもできるのです(生意気でスイマセン)。それを目次だと勘違いされている輩も実際多いのですが、難しいのは部・編・章・節の階層に歴史情報を整理して組み立てていくことで、これは経験と才能がなければできません(大袈裟でスイマセン)。美しく整えられ、切り口鮮やかな目次は、芸術的な輝きを見せるものですよ(お見せできなくてスイマセン)。
構成と目次の違い
さて、目次が沿革や企業史の骨格とするなら、別に年史全体の骨格を組み立てる必要があります。これが、一般に構成(全体構成、基本構成とも)と呼ばれるものです。例えば、巻頭に写真グラビアを何見開きか入れたい、トップの挨拶をその前後に入れて、創業者の生涯を今の社員に伝えたい、肝心の沿革はきちんと扉を設けて、中程にもう一度口絵を置いてはどうか、資料や年表は最後のほうに置くことが多いらしいが・・・など、家を新築するがごとくにいろいろな可能性をシミュレーションするはずです。一例として、こんな構成を考えたとします。
大扉→口絵→前付(発刊挨拶/目次/凡例)→創業者伝記→中口絵→
沿革史→資料→年表→索引→後付
これら編集項目それぞれが編集方針にかなっているか、表現方法は適切か、カラーの配分とページ数はどうか・・・などを設計するのが構成です。編集者にとってはお手の物でしょう。一方の目次とは、上記の沿革史の中身の組み立てです。こちらは主として執筆者の領分。あくまで年史の制作実務の話ではありますが、この両者が企図されて初めて年史の全体像が朧に見えてくるというわけです。くどいようですが、その仮段階のものを、構成案や仮目次と呼んでいます。
構成が立てられ、規定ページ数を考慮した目次ができて、いよいよ年史制作は次なるステップへと本格的に動き出します。忙しくなりますね。でも、構成と目次があれば、海図を読み間違うことなく、勇気ある航海へと船をこぎ出すことができるのです。