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周年を機にボランティアが再び集まった~神戸開港150年記念「港都KOBE芸術祭」

幕末の1868(慶応3)年の神戸港開港から150年目の神戸では、さまざまなイベントが開かれています。そのうちの「港都KOBE芸術祭」に行ってきました。

神戸開港150年記念事業は、2017(平成29)年1月1日から神戸港が開港150周年を迎える2018(平成30)年1月1日までの1年間にわたって(一部事業は2018年3月まで)、記念式典や国際会議、客船クイーンエリザベスⅡの寄港のほか、おもなものだけでもこれまでに120以上のさまざまな行事やイベントが行われています。※
神戸のイベントとしてよく耳にする「神戸ファッションウィーク」や「海フェスタ」、「インフィオラータ神戸」なども神戸開港150年記念事業に参画しており、年間を通じて神戸の街全体で周年を盛り上げるようになっています。
※神戸開港150年記念事業サイト「おすすめイベント一覧」をカウント(神戸開港150年

今回訪れた神戸開港150年記念「港都KOBE芸術祭」は、9月16日(土)から30日間の会期で開催されました。この芸術祭が特異なのは、船に乗ってアート鑑賞することにあります。神戸の街並みと六甲の山並みを背景に、神戸港と神戸空港島を広大なキャンバスに見立てて、埠頭や公園、駅構内などに大型のアート作品が展示され、港という立地を最大限に生かしたアートイベントとなっています。
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アート鑑賞船「ファンタジー号」

さあ、アート鑑賞船に乗って出航。

デッキにはアクリルボードに詩が書かれたフレームが並べてあります。フレームを手に持って、神戸ゆかりの詩人(八木重吉、竹中郁、山村順、安水稔和)の詩を景色と重ねあわせて神戸の街を眺める作品には、戦災や阪神・淡路大震災などさまざまな出来事が想い起こされます。「時を刻み、豊かな広がりへ」という開催テーマをそのまま表しているようです。
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「九つの詩片─海から神戸を見る」(古巻和芳)

海から見る神戸

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「その向こう」(西野康造)

船を係留するための係船杭に置かれた作品。これはどうしても、船からでなければ鑑賞できません。そのほか、岸壁や突堤に並んだ作品は一様に海に向けられています。作品を鑑賞する人は海から神戸の街を眺めることで、「港の町=神戸」を強く意識させられます。
(一部写真は陸上で撮影しています)

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「ウィンドキャラバン」(新宮晋)

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「ひまわり」(西村正徳)

一方、船内ではコンテンポラリーダンスが上演されています。このダンサーたちは、神戸市内のNPOが毎年開く「国内ダンス留学」という、若いアーティストたちによる自己研鑚プログラムの卒業生たち。このNPOは、阪神・淡路大震災で壊滅的な被害を受けた新長田(神戸市内)の商店街で、神戸市が建てた復興再開ビルに小劇場を構え、新長田の各所にアーティストたちがやってきて展示や公演、ワークショップなどのアートイベントを開く環境づくりをしています。いわば、常設のアーティスト・イン・レジデンスともいえる団体です。「港都KOBE芸術祭」が神戸のまちづくりにつながっていると感じました。
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船上でのコンテンポラリーダンス(NPO DANCE BOX)

周年を機に見つめ直す市民の芸術祭

さて、神戸の芸術祭と言えば「神戸ビエンナーレ」というタイトルに耳なじみがありますが、残念ながら「神戸ビエンナーレ」は2015年を最後に開催が打ち切られています。実行委員会事務局(神戸市文化交流課)に聞いてみたところ、「港都KOBE芸術祭」は直接的には神戸ビエンナーレの後継ではないけれども、「文化を生かしたまちづくり」を標榜する神戸市にとって、精神的なものとして継承している側面があるとの話。開港150年という区切りを捉えて港に関わる内容でやはり芸術祭をしようと事業化されたそうです。また、実行委員会の設立は芸術祭開催のわずか11カ月前。神戸ビエンナーレに参加していたボランティアの力があったからこそ、短期間での開催にこぎつけたとのこと。やはり神戸ビエンナーレの蓄積が生かされているようです。会場で出会ったボランティアの男性は、とにかく本当に時間が足りなかったと言いながら、作品を解説するフライヤー(なんと、開催日前日にこの方が手作りされたそうです)を配っていました。

この芸術祭が今後も定期的に開催されるかどうかは、検討中とのことです(同課)。それだけに開港150年を機に「復活」した芸術祭は、市の職員や市民ボランティアなどインナーの活性化を招くとともに、長年続けてきた市民イベントを改めて問い直し、その価値を再認識する過程でもあったことでしょう。

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西村茂
Writer 西村茂

リサーチ会社、商業施設の計画事務所を経て(株)エトレ入社。企業・自治体の広報支援、FCチェーンの開発支援業務に従事したのち周年事業室に勤務。

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