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思いを伝える社是・社訓⑯~YKK

~善の循環~

YKKはファスナー製造で世界最大手の企業だ。世界71カ国・地域に拠点を持ち、従業員は4万4,000人、連結売上高は2016年3月期で7,400億円にのぼる。YKKグループの社訓とも言えるのが「善の循環」だ。1993年に亡くなった創業者の吉田忠雄氏が考案した。

創業者は富山県魚津に生まれ、小学生のころに読んだ米国の鉄鋼王カーネギーの伝記にあった「他人の利益を図らなかったら、自らは栄えない」の言葉に感銘を受けた。家庭の事情で進学できず、上京して働いた。1934年にファスナーを取り扱うサンエス商会を創業、東京大空襲で工場が焼け、1945年に生まれ故郷で前身の吉田工業として再スタートし、ファスナーを製造したのだ。カーネギーに影響され、創業者はカーネギーの言葉を忘れず「善の種をまいて善を尽くしていけば、必ず報われ、限りなく善は巡る」を経営指針と掲げた。「他人の利益を図らずして自らの繁栄はない」という「善の循環」はYKK精神として、事業活動の基本となっている。

 「善の循環」を説明すると、創意工夫によって新しい価値を作り出すことで事業が発展し、消費者、取引先の繁栄につながり社会貢献ができるということだ。具体的には創意工夫によりコストダウンを図り、削減できた分は消費者、取引先、従業員で3分割して分配していく。YKKは世界企業になった現在も株式を上場していない。筆頭株主は従業員持ち株会であり、元社員やその家族らが株主に名前を連ねる。「一緒に事業をする人が株を持つべき」という創業者の考えが反映されている。

 1973年のオイルショックで原料のアルミが高騰した。その時に消費者第一を掲げ、取引先には「我々が100億円の損失を被るので出し惜しみや値上げはしないでほしい」と呼びかけ、値上げを極力抑えた。40億円の損失は出したものの、大きな信用を勝ち得た。「善の循環」が生きた証だ。

 創業者の生誕100年を記念した「感謝の集い」が2008年9月19日に富山県黒部市の黒部事業所で開かれた。取引先や関係者が集まった。39代の米国大統領、ジミー・カーター氏はメッセージ映像を送ってきた。カーター氏はYKKがジョージア州に工場を建てた時の州知事で、創業者と親交が深かった。「初めて吉田氏に会った時に説明された『善の循環』に感銘を受けた。この理念を次の世代へ引き継ぎ、さらに高めていかなければならない」と述べた。「感謝の集い」と同時に、世界の拠点で従業員全員が参加した「4万人社員フォーラム」が開催された。創業以来受け継がれてきた「善の循環」の思想や理念について、映像を通じて従業員全員が考える機会となった。「Cycle of
Goodness」はYKKグループ全員の心の拠り所となっている。

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斎藤 治​
Writer 斎藤 治​

1954年青森県弘前市生まれ。'79年慶応大学商学部を卒業し、読売新聞大阪本社入社。広島支局(現広島総局)、姫路支局勤務を経て,'82年大阪本社社会部、'85年政経部(現経済部)、'88年東京本社経済部(重工業クラブ、建設省、通産省担当)、'91年大阪本社政経部(金融、機械、財界などを担当)、'98年経済部次長、2001年調査研究室(現論説・調査研究室)研究員、2007年同主任研究員、2012年6月記事審査部委員、2014年9月退職。現在、フリージャーナリスト。白鷹堂代表。

大阪大学大学院(国際公共政策研究科)、関西学院大商学部、武庫川女子大などで非常勤講師。読売新聞大阪本社で長期連載した「技あり関西」取材班として2006年坂田記念ジャーナリズム賞を受賞。関西日本香港協会理事、同華人研究部長。2003年から始まった華人経営塾「チャイニーズ・マネージメント&マーケティング・スクール」のモデレーターを務めている。共著に「日中韓の戦後メディア史」(藤原書店)、「時代の車窓から見た中小企業」(晃洋書房)、「時代の証言者売新聞社)など。

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