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思いを伝える社是・社訓⑬~小林製薬

~我々は、絶えざる創造と革新によって 新しいものを求め続け、人と社会に素晴らしい『快』を提供する~

小林製薬(本社・大阪市)は、「熱さまシート」や「トイレその後に」などユニークなネーミングの商品で知られる。「我々は、絶えざる創造と革新によって 新しいものを求め続け、人と社会に素晴らしい『快』を提供する」を経営理念としている。ブランドスローガンの「あったらいいなをカタチにする」はテレビコマーシャルでも必ず使われているメッセージだ。

同社は1886年に名古屋で創業し、後に大阪に拠点を移した。社是とも言える「営業要旨」を1913年に顧客や社会に向かって発表している。「商家の座右の銘とするものは勉強、薄利、信用、誠実の項目にある」として、「薄利主義、多売主義、迅速主義」の「三大主義を弊社の店規として従業員一同協力をもってこのことの実行に努め益々世間の皆さま方のご愛顧に応え出来る限りの御便益を相計り申し上げようと存じます」と宣言している。現在もこの遺伝子は健在だ。特に「迅速主義」は、「あったらいいな」のアイデアを「カタチ」にして消費者に届ける速さは他の追随を許さない。

「行動規範」には「Something New/Something Different」(アイデア、発想の切り口として、常に「なにかが新しく、なにかが違う」ということにこだわり)、「Simple,Clear,Speed」(常に「単純」で「わかりやすく」「すばやく」ということを大切に)、「自考、自決、自実、自責」(問題解決に際しては指示を待つことなく、自ら考え、自ら決断し、自ら責任をもって率先して実行)、「チャレンジ精神」(失敗を恐れ何もしないより、失敗しても新しいことに挑戦)という行動原則を掲げている。

「行動規範」にある「社員一人ひとりが主役」を具体化したのが、社長から新入社員まで全社員が参加する提案制度だ。業務改善や新商品のヒントとなる提案は年間3万件以上もある。新商品のアイデアは毎月、社長以下経営幹部が出席して開かれるアイデア会議のプレゼンテーションで、開発対象にするかが決められる。製品化までの時間短縮を図るために、アイデアの段階からブランドマネージャー、開発担当者、研究開発者、技術者が加わり、ニーズやマーケットを見ながら、独りよがりにならずに速攻で商品化している。平均開発期間は13カ月だが、中には約5カ月で店頭に出た商品もある。「迅速主義」の精神は生きている。また、技術、減量、生産体制について、自社ですべて行う「自前主義」にはこだわらず、他社との提携やM&Aを視野に入れた柔軟性で、スピードを重視しているのも「迅速主義」の表れだろう。

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斎藤 治​
Writer 斎藤 治​

1954年青森県弘前市生まれ。'79年慶応大学商学部を卒業し、読売新聞大阪本社入社。広島支局(現広島総局)、姫路支局勤務を経て,'82年大阪本社社会部、'85年政経部(現経済部)、'88年東京本社経済部(重工業クラブ、建設省、通産省担当)、'91年大阪本社政経部(金融、機械、財界などを担当)、'98年経済部次長、2001年調査研究室(現論説・調査研究室)研究員、2007年同主任研究員、2012年6月記事審査部委員、2014年9月退職。現在、フリージャーナリスト。白鷹堂代表。

大阪大学大学院(国際公共政策研究科)、関西学院大商学部、武庫川女子大などで非常勤講師。読売新聞大阪本社で長期連載した「技あり関西」取材班として2006年坂田記念ジャーナリズム賞を受賞。関西日本香港協会理事、同華人研究部長。2003年から始まった華人経営塾「チャイニーズ・マネージメント&マーケティング・スクール」のモデレーターを務めている。共著に「日中韓の戦後メディア史」(藤原書店)、「時代の車窓から見た中小企業」(晃洋書房)、「時代の証言者売新聞社)など。

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