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思いを伝える社是・社訓⑧~伊那食品工業株式会社

いい会社をつくりましょう〜たくましく そして やさしく〜

寒天製造の伊那食品工業(長野県伊那市)は、1958年に設立し業務用粉末寒天の製造を始めた。業務用では業界トップで年商は176億8000万円(2013年12月期)の中堅企業だ。同社は社是を会社の羅針盤と位置づけ、「会社を構成するすべての人々の共通の土台であり、道標」だと言い切っている。その社是はずばり、「いい会社をつくりましょう〜たくましく そして やさしく〜」だ。

「いい会社」とは、単に経営目標の数値が良いことだけでない。取引先だけでなく、社員、地域や業界を会社を取り巻く人たち、ステークホールダーが「いい会社」と言ってくれる存在だ。多くの企業は営業成績や仕事の効率を重視する傾向を強めている。福利厚生費を抑え、社宅を廃止、社員旅行や懇親会を中止して、それが本当に会社、社員にとっていいことなのだろうか。伊那食品工業はあえて、現代の企業の有り様に疑問を呈している。
企業は本来、会社を構成する人々の幸せの増大のためにある。社員が精神的にも物質的にも幸せを感じると同時に、社会に貢献することで、売上や利益の大きさという枠に縛られず、会社が常に輝き、永続することができる。この企業理念を実現していくために社是は重要だ。

同社には「社是を実現するための心掛け」がある。会社として
①遠くをはかり、進歩軸に沿う研究開発に基づく種蒔きを常に行います
②永遠のために、適正な成長は不可欠です。急成長をいましめ、環境と人との調和をはかりながら、末広がりの堅実な成長をめざします
③収益性、財務、営業力、開発力、取引先、知名度、メセナ等について企業規模との好ましいバランスを常に考えて行動します
社員は
①ファミリーとしての意識をもち、公私にわたって常に助け合おう
②層位、熱意、誠意の三意をもって、いい製品といいサービスを提供しよう
③すべての人間性に富んだ気配りをしよう
④公徳心をもち社会にとって常に有益な人間であるように努めよ」を心がける。
心掛けをまとめた「社是カード」を社員全員が常に携帯している。

会社を木にとらえ、無理はしないでバランスをとって成長していく自然体の「年輪経営」は、社是や経営理念の行き着く先だ。企業トップを半世紀以上務めている塚越寛会長の思いが反映されている。塚越会長はトヨタ自動車の豊田章男社長と親交があり、2015年9月に経済紙「ウォールストリートジャーナル」が「トヨタ社長が相談する相手」としてインタビュー記事が掲載された。近視眼的なリストラを排して、経営者も社員も同じ理念の同志であることが、48年間増収増益を続けた背景にある。

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斎藤 治​
Writer 斎藤 治​

1954年青森県弘前市生まれ。'79年慶応大学商学部を卒業し、読売新聞大阪本社入社。広島支局(現広島総局)、姫路支局勤務を経て,'82年大阪本社社会部、'85年政経部(現経済部)、'88年東京本社経済部(重工業クラブ、建設省、通産省担当)、'91年大阪本社政経部(金融、機械、財界などを担当)、'98年経済部次長、2001年調査研究室(現論説・調査研究室)研究員、2007年同主任研究員、2012年6月記事審査部委員、2014年9月退職。現在、フリージャーナリスト。白鷹堂代表。

大阪大学大学院(国際公共政策研究科)、関西学院大商学部、武庫川女子大などで非常勤講師。読売新聞大阪本社で長期連載した「技あり関西」取材班として2006年坂田記念ジャーナリズム賞を受賞。関西日本香港協会理事、同華人研究部長。2003年から始まった華人経営塾「チャイニーズ・マネージメント&マーケティング・スクール」のモデレーターを務めている。共著に「日中韓の戦後メディア史」(藤原書店)、「時代の車窓から見た中小企業」(晃洋書房)、「時代の証言者売新聞社)など。

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