~①会社を永続させる ②人生を大切にする ③潰しのきく経営を実践する ④いい会社にする ⑤社会に奉仕する~
沢根スプリング(静岡県浜松市、沢根孝佳社長)は1966年創業の総合ばねメーカーだ。従業員約50人の中小企業だが、創業以来49期連続黒字経営を続けており、2014年に「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」の「中小企業長官賞」を受賞した。通信販売で1個からでも注文に応じるなど、一味も二味も違う会社だ。社是は「相互信頼し協力一致する。常に品質技術の向上を図る」だが、経営理念として①会社を永続させる②人生を大切にする③潰しのきく経営を実践する④いい会社にする⑤社会に奉仕するーの5つを掲げている。
会社の存続には「適正な利益を上げ、適正規模を守り」、「堅実経営」に徹する。その結果、黒字経営で自己資本比率は70%以上と基盤がしっかりしている。「お互い1回だけの限られた人生であり、その人生を大切にする。社員が健康で幸せになり、80%で満足し働く喜びや自己成長を感じられる会社にする」ためには、徒らに規模拡大を求めず、余裕を持たなければならない。それを実現するためには、「どんな環境にも対応できる柔軟な潰しのきく経営」で、他社との差別化を図っていく。「他社のやらない、やれない難しい仕事にも積極的にチャレンジ」して、「いい会社」と言われることを目指し、「人のため社会のために奉仕」する。
社員を大事にしているのは、労働時間に表れる。夜勤はしておらず、月間の社員1人残業は4時間だ。家族団らんの時間を持てるようにすることが狙いだ。中小企業の有給休暇消化率は全国平均で40%台だが、同社は80%を超えている。長期休暇を認められ、4か月の世界旅行をした社員もいる。健康面でも禁煙を奨励し、禁煙外来への費用を会社が負担している。
パートから社長まで全員が作文を書いて文集を出しており、30年以上続けている。給与明細書に社員や家族宛に社長メッセージを書くなど、人財育成には最も力を入れている。こうした社風の中から他社とは違うビジネスが生まれた。ばねの通販では常時5000種類をカタログに掲載し、対応できるのは25000種類にも上る。顧客は450社と1社に依存しない。注文を受けたら、当日に出荷する「世界最速工場」が目標。量や価格競争を避け最速サービスの「製造小売業」を標榜している。社員が自分の人生を大切に過ごすことができるために、会社としても仕事の仕組みを変え、他にない経営手法に挑戦している。経営理念は確実に実現されている。