年史が史観の表現である以上、その表現様式が多種多様であるのは当然です。
戒むべきは固定概念(ジョーシキ)
均一化された様式は堕落の囁きに過ぎません。あなたの周りを見渡してご覧なさい。日々数多くの出版物が斬新な目次や装幀を競い合っているのがわかります。年史だけがそうした流れに無縁でいられるはずもありません。
戒むべきは、年史とはこの程度のものと高を括った固定概念にほかなりません。市中に溢れ返る昼寝の枕的な年史が何故ここまで増産され続けてきたのか、ここに惰性に裏打ちされた様式の欠落があるのです。
本来、規格が必要とされる印刷物のなかで、恐らく年史とはもっとも自由な様式を誇り得るものでしょう。思惟的な研究書であっても、写真集や絵本仕立ての瀟洒を誇っても、詩画集や家族アルバムの温もりを伝えようとも、一向に構わないのです。すなわち、年史にはあらかじめ約束された様式などありません。世の中では器より中身とも言いますが、しかし様式と内容は背反せず、常に相手を選んで適合するものです。もちろん様式にふさわしい内容、内容を輝かせる様式がなければなりません。肝心なのは、器にしろ中身にしろ、ニュータイプを意思的に歓迎するりベラルな発想です。両者が均整良く統一された様式こそを求めるべきでしょう。
あなたの為すべきことは、ただ一切の表現上の制約を解き放つとともに、かつてない様式を史観を支える主柱とすることです。誰もが手にしたことのない年史を手にされることを強くおすすめします。
けふのひと言
「上製本と並製本」
一般書籍の多くが上製本で、角背と丸背がある。並製本は新書に多い。上は頑健、並はカジュアル。
「スピン」
紐しおりのこと。意外と種類が多く、選ぶのも楽しみの一つ。