社史編纂のとき、歴史的イベントの一つとして位置づけていたものに、本社ビルの建設がありました。
私が勤めていた会社で、本社ビル建設は2度目の挑戦でした。
最初の計画は同じ場所で、石油ショックのために資材等が急激に高騰し、断念せざるを得なくなったのです。そのことは社内では知られており、本社ビルが完成したときの広報誌にもその記述はありました。しかし最初の本社ビルがどのような仕様なのかなど具体的なことは知られていなかったのです。
当時の広報誌にも記載はなく、残っている本社総務関係の資料でも見つけることはできませんでしたが、あるところから幻となった本社ビルのスペックが記載されている資料が出てきたのです。
この資料のおかげで、完成した本社ビルと幻の本社ビルを比較することもできました。幻の本社ビルのスペックを知らないはずなのに、意外に似ているところも多く、会社の理念や精神が受け継がれて、知らない間に似てきたとも考えられ、私たちにとっては興味深い結果となりました。
ところでこの資料、実は本社ビル建設とは特に関係のないと思われる、生産関係の資料に残っていたのでした。本社ビルの建設は会社にかかわる全ての人たちにとって大きなできごと。そのため、当時の生産部でも工場や物流センターなどで働く人たちに知ってもらうために資料をあつめ、知らせる工夫をしようとしていたのです。たまたま生産関係の編集担当が、資料を読みながら整理をしているうちに見つけたものでした。
社史編纂にしろ、アーカイブにしろ、収集した資料類はなんらかの基準によって分類し、目録化することで整理されることになります。しかしどんなにうまく分類や目録化ができても、ほしいと思う資料と一対一対応にはできません。それで、ほしい資料はないんだと思ってしまったりもします。実際には思いもよらないところに輝く資料が眠っているのに、です。
このへんのところが、分類や目録、また検索システムというものの、なかなかうまく解決のつかない、難しい問題だなあと思ったできごとでした。