創造は模倣から生まれると言うのは確かなことで、現にあなたも様々な年史を手に取っては、ためつすがめつしながら感心したり値踏みしたりの毎日をお過ごしでしょう。
そもそもが世界唯一稀少価値
確かにそれはそれ、研究熱心という点で天晴れなのですが、いざ手前の年史を作ろうという段になって、他社追随の性癖が抜けないのでは困りものです。あなたの史観は世界唯一希少価値、類似晶を一切求めることのかなわぬものであるはずですから。
他社の年史が便利なのは、戦争や経済変化、技術革新といった変化の渦中において、企業や業界が自ら取った行動をどう記述しているかを知るときです。饒舌、沈黙、明晰……と、それぞれが自負自省を込めて歴史を評価する語り口と基調は様々で、わが史観の構築に大いに参考になるはずです。
それが素人だからという自己弁護がそうした年史活用を阻み、ひたすら行文を追いかける無節操なグルービー輩に駆り立てているとすればお気の毒、これほど哀れな年史工哀史はないことでしょう。
上手い文章、工夫された表現でなくても、あるいは狭量な歴史眼と批判されようとも、自己表現こそ最上の価値。他社の年史は参考にしない、そんな惚れ惚れとする潔さが必ずや価値あるオリジナリティをモノにしてくれます。
こんな年史が作りたい! というお手本がありますか? 申し訳なくも、世の中見回してもまずそんなものはありません。隣の芝生は青いの錯覚で、まだ見ぬあなたの歴史庭園を壊してしまわぬように。
くれぐれも自戒してください。
けふのひと言
「仮目次」
編集要素と所要頁数を設計した全体構成のこと。頁数は8の倍数(16がもっとも経済的)も覚えておこう。
「口絵」
写真を主としたグラビア頁のこと。週刊誌のトップをイメージされたし。巻頭、中盤、後半と置き場はいろいろ工夫できる。ただし言葉としては古臭い、ビジュアル頁とでも呼称する方が通りは良い。